この記事は「親子で学ぶ金融教育シリーズ 全11話」の第3話です。第2話「お金はどこからくるの?」もあわせてどうぞ。

あのおもちゃもほしいし、お菓子もほしいし、あのゲームもほしい!

うーん、それ全部を買うのはちょっとむずかしいかな

えー、でも、ぜんぶほしいよ。どうしてダメなの?
お店でそう言われて、困ったことはありませんか。わが家は毎回です。
前回までで、お金が「ありがとう」の形だと見てきました。今回はそのお金を、どう使うかの話です。
お金には限りがあります。だから選ばなければいけません。この「選ぶ」という行為は、実は一生ついてまわる力です。
「欲しい」と「必要」は、どう違う?
まず、この2つを分けるところから始めます。
| どんなもの? | たとえば | |
|---|---|---|
| 欲しいもの | 見た瞬間に「いいな」と思うもの。気持ちが動いた | ガチャ、お菓子、かわいい雑貨 |
| 必要なもの | 生活や勉強で実際に使うもの。なくて困る | えんぴつ、ノート、くつ |
ここで大事なのは、「欲しい」が悪者ではないということです。
「ほしい」と思う気持ちは、とても自然なものです。それを頭ごなしに否定されると、子どもは「自分の気持ちはダメなんだ」と感じてしまいます。
じつは、もうひとつある
「欲しい」と「必要」の2つで割り切ろうとすると、うまくいかない場面が出てきます。
たとえば、絵を描くのが好きな子にとってのスケッチブック。生きるのに必要ではありません。でも、ただ「欲しい」だけでもない。
こういう「必要ではないけれど、自分の毎日を豊かにするもの」が、実は3つめとしてあります。
大人でいえば、旅行や本や趣味の道具がそれにあたります。ここにお金を使えることは、むしろ幸せなことです。

だから、選ぶときに考えたいのは「必要かどうか」だけではありません。「このお金の使い方で、自分はうれしくなるか」——そこまで含めて考えられると、選び方が変わってきます。
なつきちゃんの1,000円
小学3年生のなつきちゃんが、1,000円のおこづかいを持ってデパートに行きました。
売り場を回ると、ほしいものが4つ見つかりました。
| ほしいもの | 値段 |
|---|---|
| ゲームのガチャ | 300円 |
| チョコレートの詰め合わせ | 500円 |
| ずっと欲しかったメモ帳セット | 700円 |
| かわいいキーホルダー | 350円 |
合計すると1,850円。持っているのは1,000円です。全部は買えません。


わー、どれもほしい! でも、ぜんぶは買えない……どうしよう
なつきちゃんは、かごの前でじっと考えました。
| いいなと思うところ | でも…… | |
|---|---|---|
| ガチャ | 何が出るかドキドキする | ほしくないものが出たらがっかりする |
| チョコ | 今すぐ食べたい | 食べたらなくなってしまう |
| メモ帳 | ずっと欲しかった。毎日使える | いちばん高い |
| キーホルダー | かわいい。友だちに見せたい | 似たものを家に持っているかも |
しばらく悩んだあと、なつきちゃんが選んだのは700円のメモ帳セットでした。
なぜ、メモ帳だったのか
なつきちゃんの理由はこうです。
- 毎日、学校で使える
- 絵を描くのが好きだから、たくさん使う
- 長く大切に使えそう
- 使うたびに「自分で選んだ」とうれしくなりそう
この選び方には、うまくいったポイントが3つあります。
- すぐに決めなかった。それぞれの良いところと気になるところを、いったん並べて比べた
- 「今」だけでなく「あとで」も考えた。今たのしいかだけでなく、来週も使っているかを想像した
- 友だちがどう思うかより、自分がどう思うかで決めた。自分の好きなこと(絵)と結びつけて考えた
ガチャもチョコも、その場は楽しい。でもなつきちゃんは「使うたびにうれしい気持ちになるほう」を選びました。

ガチャもチョコもほしかったけど、このメモ帳、使うたびにうれしい気持ちになるから、やっぱりこれでよかった!
選ぶときの2つの問い:「今」と「未来」
迷ったとき、この2つを自分に聞いてみると決めやすくなります。
| 聞いてみること | |
|---|---|
| 「今」の問い | 今、本当にほしい? 今の気分だけで決めていない? |
| 「未来」の問い | 来週も使ってる? 1か月後の自分も「買ってよかった」と思う? |

この2つに両方「はい」と答えられるものは、たいてい良い買い物になります。
お子さんに聞くときは、正解を教えないことが大事です。「来週も使うと思う?」と聞くだけで、子どもは自分で考え始めます。
「買わない」も、りっぱな選択
ここは、ぜひ伝えておきたいところです。
選ぶというと「どれを買うか」の話に聞こえますが、「今日は買わない」も選択肢のひとつです。
- お金を残して、もっとほしいものが出てきたときに使う
- 来月まで待って、もっと良いものを買う
- 家にあるもので代用できないか考えてみる
「買わなかった」ことを我慢や失敗だと思わせないでください。自分で考えて選んだのなら、それも立派な決断です。
むしろ、この感覚が身についた子は、大人になってからの買い物がずいぶん楽になります。
おうちでやってみよう:1,000円チャレンジ
実際にお金を使わなくてもできます。紙とえんぴつだけで大丈夫です。

ステップ1 ほしいものを書き出す
買いたいものを3〜5個、値段つきで書き出します。
書けたら、それぞれに印をつけます。
| 印 | 意味 |
|---|---|
| 💖 | 見た瞬間に「ほしい」と思った |
| ⭐ | 生活や勉強で実際に使う |
| 😐 | あってもなくても困らない |
ステップ2 4つの質問で絞る
- どれくらい使う? 毎日? 週に1回? たまに?
- 1か月後もうれしい? そのときも「買ってよかった」と思えそう?
- 代わりになるものはない? 家にあるもので足りない?
- 値段に見合っている? 同じお金で、ほかにできることはない?
ステップ3 決めて、理由を言葉にする
決め方にはいくつかの型があります。どれが正解ということはありません。
| 決め方 | どんな選び方 |
|---|---|
| 集中型 | 高いものを1つ買う |
| 分散型 | 安いものをいくつか買う |
| 貯蓄型 | 一部を残して、次の機会に備える |
| 体験型 | ものではなく、おでかけなどの経験に使う |

決めたら「なぜそれにしたのか」を口に出してもらってください。ここが一番大事です。理由を言葉にできた時点で、選ぶ力は育っています。
親子で話してみよう
- どうして、それが今ほしいの?
- 来週も使いたいと思うかな?
- 1つだけ選ぶとしたら、どれにする?
もう少し踏みこむなら、こちらです。
- そのお金で、ほかにできることって何がある?
- 買わなかったら、どんな気持ちになりそう?
- 半年後の自分は、この選択をどう思うかな?
お買いものごっこにしても楽しめます。おもちゃ屋さんや本屋さんを設定して、予算を決めて、選んだ理由を話してもらう。それだけで立派な練習になります。
年齢別・選ぶ力の育て方
| 年齢 | できること | たとえば |
|---|---|---|
| 3〜5歳 | AかBの二択から選ぶ。理由を聞いてみる | おやつは りんご? バナナ? |
| 6〜8歳 | 3〜4個から選ぶ。値段を意識する。「買わない」も選択肢に入れる | お祭りで使えるのは300円。何に使う? |
| 9〜12歳 | おこづかいを自分で管理する。数か月先の計画を立てる | ほしいゲームのために3か月ためる |

大切なのは、年齢に対して背伸びしすぎないことです。二択で迷える子に、いきなり1,000円の使い道を任せても難しいだけです。
保護者の方へ
「ほしい」を否定しない
「ダメ」「高い」で終わらせず、「なんでそれがほしいと思ったの?」と聞いてみてください。子ども自身が、必要かどうかを考えるきっかけになります。
正解を教えすぎない
「こっちのほうがいいよ」ではなく、「どっちがいいと思う?」「なんでそう思うの?」。考えるプロセスそのものが練習です。
失敗も学びになる
「やっぱり別のがよかった」も、貴重な経験です。責めずに「じゃあ次はどうする?」と次につなげてください。
結果ではなくプロセスをほめてあげてください。「よく考えたね」「理由がしっかりしてるね」。この一言が、次も自分で考える力になります。
まとめ
- お金には限りがあるから、選ばなければいけない
- 「欲しい」と「必要」は違う。でも「欲しい」は悪いことではない
- 「必要ではないけれど、毎日を豊かにするもの」もある
- 選ぶときは「今」と「未来」の2つを聞いてみる
- 「買わない」も立派な選択
- 選んだ理由を言葉にできたら、それで十分
あとがき:選ぶ力は、生きる力
わが家でもよくあります。
「これ買って!」と言われて、買う・買わないのどちらが正解なのか、親のほうが迷う。
「良いお金の使い方」や「良い贅沢と悪い贅沢」という考え方が頭をよぎるのですが、目の前で泣かれると、つい心が揺れます。
でも、改めて思います。人生は取捨選択の連続です。
お金の使い方だけではありません。学校も、仕事も、人間関係も、どこかで必ず「選ぶ」場面が来ます。そのたびに人は迷います。
だからこそ、小さいうちから選ぶ練習をしておくことには意味があると思っています。300円のお菓子で迷った経験は、いつか大きな決断をするときの土台になるはずです。
うまく選べなくてもいい。迷った時間そのものが、練習になっています。
次回は第4話「おこづかいは何のためにあるの?」。おこづかいを、家計の練習として使う話です。

