この記事は「親子で学ぶ金融教育シリーズ 全11話」の第9話です。第8話「タダより、こわい?」もあわせてどうぞ。

ねえ、来週おばあちゃんの誕生日だよね。何かあげたいな

うれしいね。何かいいアイデアはあるの?

うーん…でも、おこづかい、今400円しかないんだよね
これまでの話は、ぜんぶ「自分のため」の使い方でした。ほしいものを買う、必要なものを買う、将来のために貯める。
でも今日は、少しちがう使い方の話です。お金は、自分以外の誰かのためにも使えます。そして、うまく使えたとき、お金は「誰かの笑顔」に変わります。
なつきちゃんの「ありがとうの贈りもの」
小学3年生のなつきちゃんも、同じことで悩んでいました。おばあちゃんの誕生日が近いのに、おこづかいは380円しかありません。
いつもおばあちゃんは、なつきちゃんのために色々してくれます。会うたびに好きな絵本を読んでくれる、風邪をひいたときにお見舞いに来てくれる、がんばったことを一緒に喜んでくれる。

いつもありがとうって伝えたいけど、380円で何が買えるかな…
見つけたもの
近くのお花屋さんで、小さなすみれの鉢植えを見つけました。値段は350円。おばあちゃんが庭いじりを好きなことを、なつきちゃんは知っていました。
お金を払うとき、なつきちゃんの心はあたたかい気持ちでいっぱいでした。「これで、ありがとうを伝えられる」。
渡した瞬間
誕生日当日、手紙をそえて鉢植えを渡すと——
「おばあちゃん、いつもありがとう。だいすき。なつきより」
「なつき、うれしいよ。世界で一番のプレゼントだね」
おばあちゃんの目には、涙が浮かんでいました。
350円の鉢植えでも、おばあちゃんはとても喜んでくれました。お金の大きさより、誰のために選んだかのほうが、心に残る。なつきちゃんは、そのことに気づきました。

お金の「あたたかい使い方」は3つある
これまで学んできたのは、ほしいものを買う、必要なものを手に入れる、将来のために貯めるという「自分のため」の使い方でした。今日はもうひとつ、「誰かのため」の使い方を見てみましょう。
| 使い方 | 伝わる気持ち | たとえば |
|---|---|---|
| プレゼント | 「あなたが大切」 | 誕生日、記念日、がんばった人へのお祝い |
| 寄付 | 「力になりたい」 | 困っている人への支援、社会をよくする活動 |
| 応援 | 「続けてほしい」 | 好きな作家やお店を、買うことで応援する |
形はちがっても、どれも「誰かのために」という気持ちが根っこにあります。お金は、その気持ちをカタチにする道具になります。

贈りものを選ぶ、4つの問いかけ
プレゼントを選ぶとき、つい「自分がすごいと思われるもの」を選びたくなることがあります。でも、それでは相手のための贈りものになりません。迷ったら、この4つを聞いてみてください。
| 聞いてみること | 何が分かる? |
|---|---|
| 相手は、何が好きだろう? | 自分の好みではなく、相手の好みで選べる |
| 相手は、今何を必要としているだろう? | タイミングが合ったものを選べる |
| もらって、困らないものだろうか? | 相手の負担にならないか考えられる |
| 気持ちが伝わる工夫はあるだろうか? | 手紙や渡し方も、贈りものの一部だと分かる |
なつきちゃんが選んだすみれの鉢植えは、値段ではなく、この4つにちゃんと答えられていました。高いものが、必ず喜ばれるわけではありません。

気をつけたい、2つのこと
誰かのために使うお金にも、気をつけたいことがあります。
1. 無理のない範囲で
おこづかいを全部使い切ってしまったり、必要なものを買うお金まで削ってしまっては、続きません。贈る気持ちは、自分の生活があってこそです。
2. 見栄で選ばない
「すごいと思われたいから」高いものを選ぶのは、相手のためではなく自分のためです。前回、うまい話には立ち止まる練習をしましたが、贈りものを選ぶときも同じです。「これは誰のための贈りものだろう」と、いちど立ち止まってみましょう。

寄付は、身近なところから
「寄付」と聞くと、なんだか大きなことのように感じるかもしれません。でも、身近なところにもたくさんあります。
| 身近な寄付 | どんなもの? |
|---|---|
| お店のレジ横の募金箱 | おつりの一部を入れられる |
| 学校や地域の募金活動 | 災害支援や環境保護などを応援できる |
| 使わなくなったおもちゃや本を送る活動 | お金だけでなく、ものを寄付する方法もある |
| フードドライブ | 食べものを困っている人に届ける活動 |
10円でも、100円でも、金額の大きさは関係ありません。「誰かの力になりたい」という気持ちが、いちばん大切な部分です。

贈ると、めぐる
誰かのためにお金を使うと、こんな流れが生まれます。
あなたが誰かのためにお金を使う → 相手が笑顔になる → 自分もうれしい気持ちになる → 自分も誰かにやさしくしたくなる → やさしさの輪が広がる
贈ったお金や寄付したお金は、自分の財布には戻ってきません。でも、相手の笑顔や、ありがとうという言葉、つながりの深まりが戻ってきます。お金では買えないものが、お金を使うことで手に入る。これが「贈る」ことの不思議なところです。

おうちでやってみよう:「だれかを笑顔に」チャレンジ
今持っているおこづかいの中で、だれかを笑顔にする方法を考えてみましょう。
- だれを笑顔にしたい?
- その人は、何が好き? 何を必要としている?
- いくら使う? どうやって渡す?
- 実行してみる
- 振り返る:相手はどんな顔をしていた? 自分はどんな気持ちになった?

ぼくは、いつも忙しいお母さんに、お手伝い券を作ってあげようかな
お金を使わない贈りものも、もちろんアリです。大事なのは、誰かのことを考えて、行動すること自体です。

保護者の方へ
体験から学ばせる
「人のためにお金を使うといい」と説明するより、実際にプレゼントを選んだり、募金箱にお金を入れたりする体験のほうが、ずっと心に残ります。理論より実感です。
金額より気持ちを言葉にする
「安いものでよかったの?」ではなく、「どうしてそれを選んだの?」と聞いてみてください。選んだ理由を話す中で、相手を思う気持ちが言葉になります。
渡したあとの対話を大切に
「相手はどんな顔をしていた?」「渡してみて、どう思った?」。振り返りの会話が、経験を記憶として残してくれます。
誰かを思いながらお金を使う経験は、共感力・社会性・責任感を育てます。将来、お金を「人を幸せにする道具」としても使える人になってくれるはずです。

まとめ
- お金は、自分のためだけでなく誰かのためにも使える
- あたたかい使い方は3つ。プレゼント・寄付・応援
- 贈りものを選ぶ4つの問いかけ。相手の好み/必要としているもの/負担にならないか/伝わる工夫
- 気をつけたいのは2つ。無理のない範囲で/見栄で選ばない
- 寄付は身近なところから。金額の大きさより、気持ち
- 戻ってくるのはお金じゃなく、笑顔やつながり
あとがき:プレゼントは、モノじゃなくてもいい
結婚記念日、家族の誕生日、母の日に父の日。数えてみると、1年には「プレゼントを考える日」が意外とたくさんあります。
子どもが小さいころは、モノを選ぶ時間がなかなか取れませんでした。それで、ここ数年は家族旅行という「体験」をプレゼント代わりにすることが増えました。
ただ、正直に言うと、最近の宿代の値上がりには驚かされます。以前は1人2〜3万円で満足できた宿が、今では5〜6万円、時には10万円ということも。子どもが成長するにつれて出費も増えるので、正直きついなと感じることもあります。
そんな中で気づいたのは、お金をかけなくても、想いは伝わるということです。子どもが手紙を書いてくれたとき、ふだんの何倍もうれしい気持ちになりました。
お金を使うことだけが、プレゼントじゃない。「誰かの笑顔を思って行動すること」そのものが、いちばんの贈りものなのかもしれません。
あなたの家庭では、どんな「贈り方」をしていますか。お金の使い方にも、家庭それぞれのストーリーがあるのだと思います。
次回は第10話「お金としあわせの関係って?」。お金とどう付き合うと、しあわせに近づけるのかを考えます。

