
ねえ、このゲーム見て。「インストール無料!」だって

ほんとうに、ずっと無料なのかな?

えっ、書いてあるよ、「インストール無料」って!
前回、「絶対にもうかる」という話はウソですと書きました。今回は、その続きのような話です。
世の中には「無料」と書かれたものが、たくさんあります。
先に言っておくと、無料そのものは悪いことではありません。ただ、無料には必ず理由があります。今回は、その理由の見つけ方の話です。
リクくんの「無料ゲーム」
ゲームソフトをためて買おうとしていたリクくんが、スマホで色々な無料ゲームの広告を見つけました。
- インストール無料!
- いまだけ特別キャンペーン
- 課金なしで最強になれる

タダなら、やってみよう
遊びはじめて、すぐ気づいた
| 起きたこと | そのとき出てくるもの |
|---|---|
| 3分に1回、30秒の広告が入る | 「広告を消す:200円」 |
| 強い武器がないと先へ進めない | 「伝説の剣:300円」 |
| 体力の回復に3時間待ち | 「今すぐ回復:50円」 |
最初は「ちょっとだけ」のつもりでした。100円。次に200円。「せっかくだから」でもう200円。
気がつくと、合計500円が消えていました。ゲームソフトのためにためていた、あの500円です。


あれ、無料じゃなかったの?
無料だったのは入り口だけでした。中に入ってから、少しずつお金を使いたくなるように作られていたのです。
これはズルではありません。「入り口は無料、中身は有料」という、きちんとした商売のやり方です。悪いのは仕組みではなく、気づかないまま使ってしまうことのほうです。
「無料」には、3つのタイプがある
ひとくちに無料といっても、種類があります。それぞれ、お金を出しているのが誰かが違います。
| タイプ | どういうこと? | たとえば |
|---|---|---|
| エサ型 | 入り口だけ無料。あとから買いたくなる | 基本無料のゲーム、お試し期間 |
| 広告型 | 広告を見るかわりに無料。お金は広告主が払っている | 動画サイト、無料アプリ |
| データ型 | あなたの情報を集めるかわりに無料 | 会員登録が必要なサービス |
どれも、会社が損をしているわけではありません。どこかで、ちゃんとお金が動いています。

無料でも、何かは払っている
お金を払っていないだけで、払っているものは必ずあります。
| 払っているもの | どんなふうに? |
|---|---|
| お金 | あとから、少しずつ。気づきにくい |
| 時間 | 広告を見る30秒。待たされる3時間 |
| 情報 | 名前、年れい、どこに住んでいるか、何が好きか |
3つめの「情報」は、子どもにはいちばんピンときにくいところです。でも、あなたのことを知りたい会社は、たくさんあります。そこを説明しておくと、あとで役に立ちます。

気をつけたい、3つのしかけ
「うまい話」には、決まったパターンがあります。この3つを知っているだけで、立ち止まれるようになります。
1. 急がせる
「あと5分で終了」「今日だけ」。急がされると、人は考えるのをやめます。それがねらいです。
本当にいいものなら、明日でもいいはずです。
2. みんなやってる、と言う
「100万人が使っています」「友だちもやってるよ」。人数が多いことと、あなたに合っているかどうかは、まったく別の話です。
第5話の3番目の問いかけと同じです。「みんなが持っているから、ほしくなっていない?」
3. あなただけ特別、と言う
「あなただけの特別なご案内」。うれしくなりますが、同じ文章が何万人にも送られています。

「絶対に損しない」「かんたんにもうかる」「今だけ限定」「リスクはありません」
そんなにいい話なら、なぜ知らない人に教えてくれるのでしょう。
迷ったときの、5つの質問
「無料」や「うまい話」に出会ったら、この5つを聞いてみてください。
| 聞いてみること | 何が分かる? |
|---|---|
| なぜ、無料なの? | 理由が説明できないなら、あやしい |
| だれが、得をするの? | お金が動いている場所が見える |
| あとで、お金はかからない? | 入り口だけ無料のパターンを見抜ける |
| 自分のことを、どこまで教える? | 払っているのが情報だと気づける |
| やめたいとき、すぐやめられる? | 抜けにくい仕組みを避けられる |
ぜんぶ答えられるなら、たぶん大丈夫です。ひとつでも「分からない」があったら、その日は決めない。それだけで十分です。

第5話の5つとは、役割が違います
このシリーズには、5つの質問が2回出てきます。混ざらないように、ちがいを書いておきます。
| 何を確かめる? | 向いている先 | |
|---|---|---|
| 第5話の5つ | その「ほしい」は、本当に自分のもの? | 自分の気持ち |
| 今回の5つ | この話は、どういう仕組み? | 相手のしくみ |
自分の内側を見るのが第5話、相手の側を見るのが今回です。両方できると、かなり強くなります。

身のまわりの「無料」を、探してみる
探してみると、驚くほどたくさんあります。
| よく見かける「無料」 | かわりに払っているもの |
|---|---|
| 基本プレイ無料のゲーム | アイテム代、広告を見る時間 |
| 無料の動画サイト | 広告を見る時間、見たものの記録 |
| 初月無料のサービス | 2か月目からの月額。解約を忘れると続く |
| お店の試食 | 「食べたから買わなきゃ」という気持ち |
| 入場無料のイベント | 中で売っているもの |
| 無料の相談 | そのあとにすすめられる、有料のもの |
くり返しますが、これらは悪いことではありません。会社も生きていかなければいけないので、どこかで利益を出すのは当たり前です。
大事なのは、「自分が何を払っているか、分かったうえで使う」ことです。

おうちでやってみよう:たんてい ごっこ
広告を見かけたら、親子で探偵になってみてください。調べるのは3つだけです。
- これは、信じられる?
- どうして、そう思った?
- 「無料」のかわりに、何を払ってる?
テレビのCMでも、動画の前に出てくる広告でも、なんでもかまいません。正解を出すことより、立ち止まること自体が練習です。
役を交代してみると、もっと効きます
親が「うまい話をする人」、子どもが「探偵」。そのあと、交代します。
| うまい話をする人 | 探偵 |
|---|---|
| 「今だけ、特別に無料です!」 | 「なぜ無料なんですか?」 |
| 「あなただけの特別なご案内です」 | 「何人に言っていますか?」 |
| 「みんなやってますよ」 | 「やってない人は、なぜですか?」 |
だます側をやってみると、どこで人が引っかかるかが分かります。これがいちばん身につきます。

年齢別・だまされない力の育て方
| 年齢 | 伝えること | やってみること |
|---|---|---|
| 6〜8歳 | 知らない人の「タダであげる」は、まず相談。「ないしょね」と言われたら、必ず言う | おまけつきのお菓子で「なぜおまけがあるの?」を話す |
| 9〜10歳 | 無料のかわりに何を払っているかを考える。「みんなやってる」は理由にならない | 動画の前の広告が、なぜ出るのかを説明する |
| 11〜12歳 | その情報は、だれが何のために出しているか | ニュースや広告を一緒に読んで、意見を言い合う |
低学年でいちばん大事なのは、「ないしょにして」と言われたら必ず言うです。これだけは、早いうちに伝えておいてください。
保護者の方へ
「だめ」で終わらせない
禁止するだけだと、こちらの目が届かないところでやります。仕組みを説明したほうが、結局は安全です。「なぜ無料でできるんだろうね」と一緒に考えるだけで十分です。
身近な例から入る
詐欺のニュースより、ゲームの課金や動画の広告のほうが響きます。自分が体験していることだからです。
引っかかっても、責めない
ここが、いちばん大事かもしれません。
一度叱ると、次からは言わなくなります。言わなくなると、被害はもっと大きくなってから見つかります。「よく言えたね」から始めてください。
大人の失敗を話す
親が引っかかった話は、よく効きます。「大人でも引っかかる」と分かると、子どもは自分を責めずに相談できるようになります。
「おかしいな」と思っていちど止まれること。正解を当てる必要はありません。止まって、だれかに聞ける。それだけで、たいていの被害は防げます。
まとめ
- 無料そのものは悪くない。ただし、無料には必ず理由がある
- 無料には3つのタイプ。エサ型・広告型・データ型
- お金を払っていなくても、時間か情報は払っている
- 気をつけたいしかけは3つ。急がせる/みんなやってると言う/あなただけ特別と言う
- 迷ったら5つの質問。ひとつでも分からなければ、その日は決めない
- 第5話の5つは「自分の気持ち」、今回の5つは「相手のしくみ」を見る
- 引っかかっても責めない。言えなくなるほうが、ずっとこわい
あとがき:年会費無料につられて作ったカードが、リボ払い専用だった
「タダより高いものはない」。子どものころ、親からよく言われました。
そのときは、ふうん、としか思っていませんでした。昔の人の言うことは、あとから効いてきます。
社会人になって5〜6年たったころの話です。
当時ハマっていたゲームがありました。そのゲームとクレジットカード会社が一緒にやっていたキャンペーンで、「このカードを作れば、ゲーム内の限定アイテムがもらえる」というのです。
しかも年会費は無料。迷いませんでした。その場で申し込みました。
限定アイテムは、ちゃんともらえました。そこまではよかったのです。
問題は、しばらくたってからでした。
当時の私は、引き落としの明細をほとんど見ていませんでした。あるとき何気なく見て、手が止まりました。思っていた金額と、どうも違うのです。
カード会社に電話をかけて、言われた言葉がこれです。
「そちらのカードは、リボ払い専用カードとなっております」
リボ払いというのは、いくら使っても毎月の支払いが一定になるかわりに、返し終わるまで手数料がかかり続ける払い方です。第4話で書いた「借りたら、利息をつけて返す」の、いちばんきつい形だと思ってください。
私の場合、そのカードはゲーム関係の支払いにしか使っていなかったので、傷は浅く済みました。
でも、もしふだんの買い物に使っていたらと思うと、今でもぞっとします。
この件で学んだことは、3つです。
- 「無料」の裏には、必ず何かがある。年会費が無料なら、どこで利益を出しているのかを考える
- 契約するときは、説明文を読む。面倒でも、読む
- 明細を見る。見ていれば、もっと早く気づけました
今回の記事に出てくる5つの質問を、あのときの自分にさせていたら、どうだったでしょう。「なぜ無料なの?」「だれが得をするの?」——1つ目で止まっていたはずです。
この話は、子どもにもしました。おかげか、ゲームは「無料の範囲で遊ぶもの」という感覚が身についたようです。
無料アプリ、無料お試し、無料プレゼント、初月無料。あまい言葉は、これからも次々に出てきます。
止まって、ひとつ質問できるかどうか。それだけの違いです。
次回は第9話「お金は誰かの笑顔に変えられる?」。使うことで、人をよろこばせる話です。

