この記事は「親子で学ぶ金融教育シリーズ 全11話」の第2話です。第1話「お金の“正体”ってなに?」もあわせてどうぞ。

ねえ、なんでパパは毎日おしごとに行くの?

お金をもらうためかな

じゃあ、なんでおしごとをするとお金がもらえるの? そのお金って、どこから出てくるの?
……たしかに。会社が払ってくれる、では答えになっていません。その会社は、どこからお金を持ってきているのでしょう。
前回は「お金とは何か」を見ました。今回は「お金はどこから来るのか」です。ひとりの小学生の話から始めます。
リクくんの、りんごジュース屋さん
小学4年生のリクくんクラスは、学校のお祭りでりんごジュース屋さんを開くことになりました。
リクくんのクラスでは家にあったりんご持って来て、切って、しぼって、紙コップにそそぐ。手書きの看板も作りました。1杯100円です。
売り始めると、お友だちや先生が次々に買ってくれました。

おいしい!

元気が出た!

のどが渇いてたから助かった!
お祭りが終わるころ、リクくんクラスの手元には100円玉がたくさん残っていました。

リクくんは思いました。

ぼく、だれかのために何かして、ちゃんとお金がもらえたんだ
なぜ、お金がもらえたのか
リクくんが渡したものと、お客さんが受け取ったものを並べてみます。
| リクくんが渡したもの | お客さんが感じたこと |
|---|---|
| おいしいりんごジュース | 「おいしい!」(味の満足) |
| のどの渇きをうるおすもの | 「助かった!」(困りごとの解決) |
| お祭りを楽しくする雰囲気 | 「楽しい!」(心の満足) |
| 手作りのあたたかさ | 「すごいね!」(気持ちの動き) |
リクくんは「価値」を渡し、その代わりに「お金」を受け取ったのです。

つまりお金は、こう言いかえられます。
だれかの「ありがとう」が、形を変えたもの。
「ありがとう」がバトンのように手渡されていく。それがお金です。
でも、会社で働くお父さんは?
ここで、子どもがよくつまずくところがあります。
リクくんの話は分かりやすい。目の前のお客さんが「おいしい」と言って、その場でお金をくれるからです。
ところが会社員のお父さんには、目の前にお客さんがいません。毎朝どこかへ行って、月に1回お金が振り込まれる。これでは「ありがとう」が見えません。
でも、間に会社が入っているだけで、仕組みは同じです。
- お父さんが会社で仕事をする
- 会社がその仕事を集めて、商品やサービスにする
- それを買った人が「ありがとう」と言ってお金を払う
- 会社がそのお金の一部を、お父さんに給料として渡す

リクくんとの違いは、「ありがとう」が届くまでに人が何人か挟まっていることだけ。もとをたどれば、給料も誰かの「ありがとう」です。
もしお子さんが「パパの仕事って、誰の役に立ってるの?」と聞いてきたら、それはとてもいい質問です。一緒にたどってみてください。
朝ごはんが食卓に届くまで
もうひとつ、身近な例で見てみましょう。今朝のごはんが目の前に来るまでに、何人の人が関わっているでしょうか。
- お米を作る農家の人
- お米を運ぶ運送会社の人
- お米を売るお店の人
- 炊飯器を動かす電気を作る人
- お米といだり炊いたりする水を届ける人
この人たち全員が「だれかの役に立つこと」をしていて、その「ありがとう」がお金というバトンになって、社会をぐるぐる回っています。

一杯のごはんの裏側に、これだけの人がいる。そう考えると、いただきますの意味も少し変わってきます。
お金にならない「ありがとう」もある
ここは、ぜひ伝えておきたいところです。
ここまで読むと「価値を出せばお金がもらえる」と聞こえるかもしれません。でも、世の中にはお金にならない「ありがとう」もたくさんあります。
- 家族のごはんを作る
- 洗濯をする、掃除をする
- 熱を出した子どもを看病する
- 近所の落ち葉を掃く
- 困っている人に道を教える
どれも1円にもなりませんが、確実に誰かを助けています。
お金は「ありがとう」の一部を目に見える形にしたものであって、すべてではありません。お金にならない仕事のほうが、人を支えていることもあります。

ここは飛ばさないでください。「お金にならないことは価値がない」という受け取り方になりかねません。お子さんと話すときは、ぜひセットで伝えてください。
今日の3つの発見
- お金は「もらうもの」ではなく「生み出すもの」。自然にわいてくるものではなく、価値を渡した見返りに生まれます
- 働くとは「だれかを助けること」。つらいことではなく、社会の中で役割を持つことです
- だれかの「ありがとう」が、お金という形で返ってくる。お金の向こう側には、いつも人がいます

おうちでやってみよう:「ありがとう」さがし
お子さんに、こんなふうに聞いてみてください。
- お父さん・お母さんは、どんな仕事をしていると思う?
- その仕事は、どんな人の役に立っているんだろう?
- 「ありがとう」って言われるのは、どんなとき?
もう少し踏みこむなら、こちらです。
- もしその仕事がなかったら、だれが困るかな?
- いちばんうれしかった「ありがとう」は何だった?
- 将来、どんな「ありがとう」をもらいたい?

ノートに書き出してみよう
身のまわりの「はたらく人」を探して、その人が誰を助けているか書いてみます。
| はたらく人 | だれを、どう助けている? |
|---|---|
| レジの人 | 買い物をすばやく終わらせてくれる |
| パン屋さん | おいしいパンで朝を気持ちよくしてくれる |
| バスの運転手さん | 安全に目的地まで運んでくれる |
| 学校の先生 | 分からないことを分かるようにしてくれる |
| ごみを回収する人 | まちをきれいに保ってくれる |
| 電気を作る人 | 暗い夜でも過ごせるようにしてくれる |
「見えないところで働いている人」を見つけられたら、しめたものです。
保護者の方へ
日常の会話で、少しだけ言い方を変えてみてください。
| よくある言い方 | こう言いかえると |
|---|---|
| お父さんはお金をもらいに行く | お父さんは会社のみんなを助けに行く |
| 働いてお金を稼ぐ | だれかの役に立って「ありがとう」をもらう |
| 疲れた、大変だった | 今日も「ありがとう」をもらってきたよ |

それと、お子さんが誰かの役に立ったときは、はっきり言葉にしてあげてください。
- お手伝いをしたら「ありがとう、すごく助かった」
- 友だちに優しくしたら「相手はきっとうれしかったね」
「自分も人の役に立てる」という感覚は、将来の働くイメージにそのままつながります。
まとめ
- お金は、だれかの「ありがとう」が形を変えたもの
- 会社員の給料も、たどれば誰かの「ありがとう」
- 社会は「ありがとう」のバトンでぐるぐる回っている
- ただし、お金にならない「ありがとう」もたくさんある
- 働くとは、だれかを助けること
あとがき:お金の裏側にある「やさしさ」
お金の勉強をしていて、いちばん腑に落ちたのは「商売の基本は、相手に喜んでもらうこと」という考え方でした。
売る側が得をするために工夫するのではなく、相手が喜ぶことをした結果としてお金が返ってくる。順番が逆だったのだと気づいたとき、ガツンと来ました。
それまでの私は、給料をもらうこと、お金を払うことを、あまり深く考えたことがありませんでした。
でもそう考えるようになってから、コンビニでの支払いも、宅配便の受け取りも、その一つひとつが「誰かを支える行動」なのだと感じるようになりました。
だれかが手間をかけてくれたから、ごはんが届く。荷物が届く。生活が回る。あたりまえに見える日常は、支え合いの上に成り立っています。
もし私たちが「この人も、誰かの役に立とうとしてくれているんだ」という目で人と接することができたら、意味のないクレームも減って、世の中はもう少し働きやすくなるかもしれません。
もちろん、すべてを我慢する必要はありません。ただ、感情的な文句ではなく「ここが困った」「こうしてもらえると助かる」と伝える。そんな伝え方が増えたら、きっともう少し優しい社会に近づくはずです。
お金のことを学ぶと、自分の行動も、社会の見え方も変わってきます。それが本当におもしろい。
次回は第3話「欲しい? 必要? 選ぶ力を育てよう」。限られたお金の中で選ぶ力を育てます。

