お金がふえるって、どういうこと?|親子で学ぶ金融教育 第7話【育てる視点】

「お金がふえるって、どういうこと?」親子で学ぶ金融教育 第7話のアイキャッチ画像 親子で学ぶお金

この記事は「親子で学ぶ金融教育シリーズ 全11話」の第7話です。第6話「ためるって、すごい」もあわせてどうぞ。

子ども
子ども

やっとためて買えた! ……でも、貯金箱またゼロだ

親

また次の目標を決める?

子ども
子ども

うん。でもさ、ためてるあいだ、お金って何もしてないよね

いい質問です。

前回は、6か月かけてためる話をしました。そのあいだ、お金は貯金箱の中でじっとしています。増えも減りもしません。

ところが世の中には、置いておくあいだに増えることがあるお金もあります。今回はその話です。

ただし、いいことばかりではありません。減ることもあります。そこも含めて見ていきます。


学校の畑で、リクくんが見たもの

秋のことです。リクくんのクラスは、学校の畑でさつまいもを掘りました。

土をほりかえすと、大きないもが次々に出てきます。かごがいっぱいになりました。

リクくん
リクくん

先生、これ全部、春に植えたいもからふえたんですか?

先生
先生

そう。5本植えたら、秋には15本になったよ

リクくんは、少し考えてから言いました。

リクくん
リクくん

春に5本食べちゃってたら、今日はゼロだったってことですか

そのとおりです。春の時点で、5本のいもには2つの道がありました。

選んだ道
すぐ食べる5本たべられる。おいしい0本
土にうめる0本。半年待つ15本になった
5本のさつまいもの2つの道を比べた図解。すぐ食べると秋には0本、土にうめると15本になった
すぐ食べるか、土にうめるか

これが投資の考え方です。むずかしい言葉に聞こえますが、やっていることは「すぐ使わずに、育てる」だけです。

ただし、先生はこうも言いました

先生
先生

でもね、毎年うまくいくわけじゃないよ。雨が少なかった年は、小さいいもしかできなかった

ここが大事なところです。植えれば必ず3倍になる、というわけではありません。天気が悪ければ小さいまま。虫に食べられることもあります。

5年ぶんのさつまいもの収穫量の棒グラフ。よく育った年もあれば、雨が少なく4本しか採れなかった年もある
よく育った年もあれば、そうでない年もある

それでも先生は「長い目で見れば、植えたほうがたくさん食べられる」と言いました。毎年ではなく、何年もならしてみればという話です。


実は、もう投資をしている

投資はお金だけの話ではありません。「今すこしがまんして、あとでもっと良くなることを期待する」なら、それは全部おなじ形です。

今することあとで返ってくるかもしれないもの
遊ぶのをがまんして、勉強する分かることが増える
おこづかいでピアノを習うひける曲が増える
本を1冊買って読む知らなかったことを知る
毎日走る体力がつく
子どもがすでにしている投資の図解。勉強・習いごと・読書・運動が、あとで返ってくるもの
これは第5話の②の箱そのもの

お気づきかもしれません。これは第5話の「② 未来の自分のためのもの」そのものです。

子どものうちの投資は、本や図鑑や習いごとで十分です。②の箱に入れているものは、もう立派な投資です。大人になると、そこに「お金そのものを育てる方法」が加わります。


お金を育てる方法は、大きく3つ

大人が使う方法を、名前だけ紹介します。中身は「土にうめる」といっしょです。

1. 銀行にあずける(預金)

銀行にお金をあずけると、そのお礼として少しだけお金がもらえます。これを利息といいます。

増える量はとても小さいですが、そのかわり減ることはほとんどありません。いちばん安全なやり方です。

2. 会社を応援する(株)

「このお店、もっと大きくなってほしいな」と思う会社があったとき、その会社のを買って応援することができます。

会社がうまくいけば、株の値段は上がります。うまくいかなければ、下がります。上がるか下がるかは、買うときには分かりません。

3. みんなでお金を出し合う(投資信託)

ひとりでは少ししか出せなくても、たくさんの人が少しずつ出し合えば、まとまったお金になります。それをまとめて、いろいろな会社に配るしくみが投資信託です。

ひとつの会社がうまくいかなくても、ほかでおぎなえる。ただし、全体が下がるときは、これも下がります。

お金を育てる3つの方法の図解。預金・株・投資信託
名前を知っておくだけで十分
この記事で書かないこと

買い方や始め方には触れません。この回のねらいは「そういうものがある」と知ることまでです。実際にやるかどうかは、大人が自分で調べて、自分で決めることです。


増えることもあれば、減ることもある

ここは飛ばさないでください。投資の話は、増える側だけを見ると危ないからです。

起きることどういうこと?
値段が下がる1,000円で買ったものが、800円になることがある
時間がかかるすぐには結果が出ない。何年もかかることがある
予想が外れる「きっと良くなる」と思っても、そうならないことがある
投資で起きる3つのことの図解。値段が下がる・時間がかかる・予想が外れる
増える側だけを見ると、危ない

雨が少なかった年のさつまいもと同じです。土にうめたからといって、いつも15本になるわけではありません。

いちばん覚えておいてほしいこと

「絶対にもうかる」という話は、ウソです。大人になると、これを言ってくる人がときどき現れます。増えるものは、必ず減ることもある。ここだけは、今のうちに覚えておいてください。


危なくしないための、3つの工夫

1. たまごを、ひとつのかごに入れない

かごを落としたら、中のたまごは全部われてしまいます。いくつかのかごに分けておけば、ひとつ落としても残ります。

お金も同じで、ひとつのものにまとめないで、いくつかに分けておく。これを分散といいます。

2. 長い目で見る

さつまいもを、植えた次の日にほりかえす人はいません。1日下がっただけであわてない。何年もかけて見るものだと思っておくと、落ち着いていられます。

3. 分からないものには、手を出さない

これがいちばん大事かもしれません。人にすすめられたけれど、自分では説明できないもの。そういうものには近づかない。知らないことが、いちばん危ないからです。

投資を危なくしないための3つの工夫の図解。分散する・長い目で見る・知らないものは避ける
覚えておくのは、この3つだけ

そしてもうひとつ。順番は、⓪のお守り貯金が先です。何かあったときのお金を確保してから、その先の話。ここを飛ばすと、下がったときに耐えられなくなります。


おうちでやってみよう:食べる? 植える?

紙もいりません。こう聞いてみてください。

きゅうきょくの選択

さつまいもが1本あります。
A:今日、ふかしいもにして食べる
B:畑にうめて、来年10本にする(かもしれない)
どっちにする?

さつまいも1本を今日食べるか、畑にうめて来年10本にするかを比べた図解
正解はない。大事なのは、そのあとの会話

正解はありません。大事なのは、そのあとの会話です。

  • どうしてそっちを選んだの?
  • 10本になったら、何に使いたい?
  • もし、うまく育たなかったらどうする?
  • 半分食べて、半分うめるのはどう?

最後の質問が出てきたら、しめたものです。それが分散の考え方そのものだからです。子どもは、言葉を知らなくても、この発想にたどり着くことがあります。


保護者の方へ

数字の話にしない

利回りや複利から入ると、たいてい伝わりません。「育てる」「信じて待つ」「うまくいかないこともある」——この3つの感覚だけで、小学生には十分です。

体験と結びつける

野菜を育てる、朝顔を観察する、時間をかけて工作を仕上げる。時間のかけ方が結果を変えるという実感が、いちばんの土台になります。

うまくいかない可能性も、正直に伝える

増える話だけを聞かせると、あとで危ない目にあいます。「絶対にもうかる、はウソ」だけは、はっきり伝えておいてください。

年齢に合わせて、段階的に

時期話すこと
低学年植物の成長。貯金箱にためること
高学年会社ってなに? 働くとお金が動くしくみ
中学生以上実際の金融商品や、経済のニュース
投資を通じて育てたい4つの力の図解。未来を見通す力・リスクを分かって決める力・待つ力・学び続ける力
投資に限らず、どこでも使える力
この回のねらい

もうけ方を教えることではありません。未来を見通す力、リスクを分かったうえで決める力、待つ力。これらは投資に限らず、どこでも使える力です。


まとめ

  • 投資とは、すぐ使わずに育てること。さつまいもを土にうめるのと同じ
  • 勉強、習いごと、本。子どもはもう投資をしている(第5話の②の箱)
  • お金を育てる方法は大きく3つ。預金・株・投資信託。まずは名前を知るだけで十分
  • 増えることもあれば、減ることもある。雨が少ない年もある
  • 「絶対にもうかる」はウソ
  • 危なくしない工夫は3つ。分散する/長い目で見る/分からないものに手を出さない
  • 順番は、⓪のお守り貯金が先。その先の話

あとがき:こども向けの本が、いちばん分かりやすかった

お金について学び直すうちに、投資は若いうちから知っておいたほうがいいと思うようになりました。自分への投資も、お金の投資もです。

それなら子どもにも伝えなければ、と思い立って、自分の言葉で説明してみました。

ぜんぜん伝わりませんでした。

自分では分かっているつもりでも、いざ子どもに向けて話すと言葉が出てきません。「増える」「利回り」「長期で」——どれも、目の前の子には届いていない顔をしていました。

困って、近所の図書館へ行きました。

驚いたことに、こども向けの投資やお金の本が、けっこうあるんです。手に取ってみて、こちらのほうが勉強になりました。

「ああ、こういう言い方をすればいいのか」。「なるほど、ここはこう言いかえるのか」。どの本にも、大人が読んでも刺さる表現がたくさんありました。

気づいたのは、こども向けの本は、大人の入門書としていちばん優秀だということです。

  • たとえが具体的で、頭に絵が浮かぶ
  • 言葉がシンプルで、読み飛ばすところがない
  • 読んでいて疲れない

これから投資を知りたい方、「株ってなに?」で止まっている方、親子で学びたい方。まずは、こども向けの本を1冊おすすめします。図書館にありますし、無料で読める電子書籍のサービスもあります。

ちなみに、このシリーズを書いているのも、その延長です。子どもに説明できるところまで自分がかみ砕けているか——書いていると、そこがはっきり分かります。

今回のさつまいもの話も、そうやって見つけた言いかえのひとつです。


次回は第8話「タダより、こわい?」。うまい話には、なぜ気をつけたほうがいいのかという話です。

▶ シリーズ全11話の目次を見る

タイトルとURLをコピーしました