タダより、こわい?|親子で学ぶ金融教育 第8話【だまされない力】

「タダより、こわい?」親子で学ぶ金融教育 第8話のアイキャッチ画像 親子で学ぶお金
子ども
子ども

ねえ、このゲーム見て。「インストール無料!」だって

親

ほんとうに、ずっと無料なのかな?

子ども
子ども

えっ、書いてあるよ、「インストール無料」って!

前回、「絶対にもうかる」という話はウソですと書きました。今回は、その続きのような話です。

世の中には「無料」と書かれたものが、たくさんあります。

先に言っておくと、無料そのものは悪いことではありません。ただ、無料には必ず理由があります。今回は、その理由の見つけ方の話です。


リクくんの「無料ゲーム」

ゲームソフトをためて買おうとしていたリクくんが、スマホで色々な無料ゲームの広告を見つけました。

  • インストール無料!
  • いまだけ特別キャンペーン
  • 課金なしで最強になれる
リクくん
リクくん

タダなら、やってみよう

遊びはじめて、すぐ気づいた

起きたことそのとき出てくるもの
3分に1回、30秒の広告が入る「広告を消す:200円」
強い武器がないと先へ進めない「伝説の剣:300円」
体力の回復に3時間待ち「今すぐ回復:50円」

最初は「ちょっとだけ」のつもりでした。100円。次に200円。「せっかくだから」でもう200円。

気がつくと、合計500円が消えていました。ゲームソフトのためにためていた、あの500円です。

無料ゲームで少しずつ課金して合計500円が消えていく図解。ちょっとだけ、もう少しだけ、せっかくだから
無料だったのは、入り口だけ
リクくん
リクくん

あれ、無料じゃなかったの?

無料だったのは入り口だけでした。中に入ってから、少しずつお金を使いたくなるように作られていたのです。

これはズルではありません。「入り口は無料、中身は有料」という、きちんとした商売のやり方です。悪いのは仕組みではなく、気づかないまま使ってしまうことのほうです。


「無料」には、3つのタイプがある

ひとくちに無料といっても、種類があります。それぞれ、お金を出しているのが誰かが違います。

タイプどういうこと?たとえば
エサ型入り口だけ無料。あとから買いたくなる基本無料のゲーム、お試し期間
広告型広告を見るかわりに無料。お金は広告主が払っている動画サイト、無料アプリ
データ型あなたの情報を集めるかわりに無料会員登録が必要なサービス

どれも、会社が損をしているわけではありません。どこかで、ちゃんとお金が動いています。

無料の3つのタイプの図解。エサ型・広告型・データ型
どれも、どこかでちゃんとお金が動いている

無料でも、何かは払っている

お金を払っていないだけで、払っているものは必ずあります。

払っているものどんなふうに?
お金あとから、少しずつ。気づきにくい
時間広告を見る30秒。待たされる3時間
情報名前、年れい、どこに住んでいるか、何が好きか

3つめの「情報」は、子どもにはいちばんピンときにくいところです。でも、あなたのことを知りたい会社は、たくさんあります。そこを説明しておくと、あとで役に立ちます。

無料でも払っているものの図解。お金・時間・情報
情報はいちばん気づきにくい

気をつけたい、3つのしかけ

「うまい話」には、決まったパターンがあります。この3つを知っているだけで、立ち止まれるようになります。

1. 急がせる

「あと5分で終了」「今日だけ」。急がされると、人は考えるのをやめます。それがねらいです。

本当にいいものなら、明日でもいいはずです。

2. みんなやってる、と言う

「100万人が使っています」「友だちもやってるよ」。人数が多いことと、あなたに合っているかどうかは、まったく別の話です。

第5話の3番目の問いかけと同じです。「みんなが持っているから、ほしくなっていない?」

3. あなただけ特別、と言う

「あなただけの特別なご案内」。うれしくなりますが、同じ文章が何万人にも送られています。

気をつけたい3つのしかけの図解。急がせる・みんなやってる・あなただけ特別
そんなにいい話なら、なぜ知らない人に教えてくれるのか
これを聞いたら、いちど止まる

「絶対に損しない」「かんたんにもうかる」「今だけ限定」「リスクはありません」
そんなにいい話なら、なぜ知らない人に教えてくれるのでしょう。


迷ったときの、5つの質問

「無料」や「うまい話」に出会ったら、この5つを聞いてみてください。

聞いてみること何が分かる?
なぜ、無料なの?理由が説明できないなら、あやしい
だれが、得をするの?お金が動いている場所が見える
あとで、お金はかからない?入り口だけ無料のパターンを見抜ける
自分のことを、どこまで教える?払っているのが情報だと気づける
やめたいとき、すぐやめられる?抜けにくい仕組みを避けられる

ぜんぶ答えられるなら、たぶん大丈夫です。ひとつでも「分からない」があったら、その日は決めない。それだけで十分です。

迷ったときの5つの質問の図解。なぜ無料か、だれが得をするか、あとでお金がかからないか、個人情報はどう使われるか、やめられるか
ぜんぶ答えられるなら、たぶん大丈夫

第5話の5つとは、役割が違います

このシリーズには、5つの質問が2回出てきます。混ざらないように、ちがいを書いておきます。

何を確かめる?向いている先
第5話の5つその「ほしい」は、本当に自分のもの?自分の気持ち
今回の5つこの話は、どういう仕組み?相手のしくみ

自分の内側を見るのが第5話、相手の側を見るのが今回です。両方できると、かなり強くなります。

第5話の5つの質問と、今回の5つの質問のちがいを示した図解。自分の気持ちを見るか、相手のしくみを見るか
両方できると、かなり強くなる

身のまわりの「無料」を、探してみる

探してみると、驚くほどたくさんあります。

よく見かける「無料」かわりに払っているもの
基本プレイ無料のゲームアイテム代、広告を見る時間
無料の動画サイト広告を見る時間、見たものの記録
初月無料のサービス2か月目からの月額。解約を忘れると続く
お店の試食「食べたから買わなきゃ」という気持ち
入場無料のイベント中で売っているもの
無料の相談そのあとにすすめられる、有料のもの

くり返しますが、これらは悪いことではありません。会社も生きていかなければいけないので、どこかで利益を出すのは当たり前です。

大事なのは、「自分が何を払っているか、分かったうえで使う」ことです。

身のまわりの無料と、かわりに払っているものを並べた図解
悪いことではない。分かったうえで使えばいい

おうちでやってみよう:たんてい ごっこ

広告を見かけたら、親子で探偵になってみてください。調べるのは3つだけです。

  1. これは、信じられる?
  2. どうして、そう思った?
  3. 「無料」のかわりに、何を払ってる?

テレビのCMでも、動画の前に出てくる広告でも、なんでもかまいません。正解を出すことより、立ち止まること自体が練習です。

役を交代してみると、もっと効きます

親が「うまい話をする人」、子どもが「探偵」。そのあと、交代します。

うまい話をする人探偵
「今だけ、特別に無料です!」「なぜ無料なんですか?」
「あなただけの特別なご案内です」「何人に言っていますか?」
「みんなやってますよ」「やってない人は、なぜですか?」

だます側をやってみると、どこで人が引っかかるかが分かります。これがいちばん身につきます。

うまい話をする人と探偵の会話例を示した図解。役を交代して練習する
だます側をやってみると、どこで引っかかるかが分かる

年齢別・だまされない力の育て方

年齢伝えることやってみること
6〜8歳知らない人の「タダであげる」は、まず相談。「ないしょね」と言われたら、必ず言うおまけつきのお菓子で「なぜおまけがあるの?」を話す
9〜10歳無料のかわりに何を払っているかを考える。「みんなやってる」は理由にならない動画の前の広告が、なぜ出るのかを説明する
11〜12歳その情報は、だれが何のために出しているかニュースや広告を一緒に読んで、意見を言い合う

低学年でいちばん大事なのは、「ないしょにして」と言われたら必ず言うです。これだけは、早いうちに伝えておいてください。


保護者の方へ

「だめ」で終わらせない

禁止するだけだと、こちらの目が届かないところでやります。仕組みを説明したほうが、結局は安全です。「なぜ無料でできるんだろうね」と一緒に考えるだけで十分です。

身近な例から入る

詐欺のニュースより、ゲームの課金や動画の広告のほうが響きます。自分が体験していることだからです。

引っかかっても、責めない

ここが、いちばん大事かもしれません。

一度叱ると、次からは言わなくなります。言わなくなると、被害はもっと大きくなってから見つかります。「よく言えたね」から始めてください。

大人の失敗を話す

親が引っかかった話は、よく効きます。「大人でも引っかかる」と分かると、子どもは自分を責めずに相談できるようになります。

いちばん大事なこと

「おかしいな」と思っていちど止まれること。正解を当てる必要はありません。止まって、だれかに聞ける。それだけで、たいていの被害は防げます。


まとめ

  • 無料そのものは悪くない。ただし、無料には必ず理由がある
  • 無料には3つのタイプ。エサ型・広告型・データ型
  • お金を払っていなくても、時間か情報は払っている
  • 気をつけたいしかけは3つ。急がせる/みんなやってると言う/あなただけ特別と言う
  • 迷ったら5つの質問。ひとつでも分からなければ、その日は決めない
  • 第5話の5つは「自分の気持ち」、今回の5つは「相手のしくみ」を見る
  • 引っかかっても責めない。言えなくなるほうが、ずっとこわい

あとがき:年会費無料につられて作ったカードが、リボ払い専用だった

「タダより高いものはない」。子どものころ、親からよく言われました。

そのときは、ふうん、としか思っていませんでした。昔の人の言うことは、あとから効いてきます。

社会人になって5〜6年たったころの話です。

当時ハマっていたゲームがありました。そのゲームとクレジットカード会社が一緒にやっていたキャンペーンで、「このカードを作れば、ゲーム内の限定アイテムがもらえる」というのです。

しかも年会費は無料。迷いませんでした。その場で申し込みました。

限定アイテムは、ちゃんともらえました。そこまではよかったのです。

問題は、しばらくたってからでした。

当時の私は、引き落としの明細をほとんど見ていませんでした。あるとき何気なく見て、手が止まりました。思っていた金額と、どうも違うのです。

カード会社に電話をかけて、言われた言葉がこれです。

「そちらのカードは、リボ払い専用カードとなっております」

リボ払いというのは、いくら使っても毎月の支払いが一定になるかわりに、返し終わるまで手数料がかかり続ける払い方です。第4話で書いた「借りたら、利息をつけて返す」の、いちばんきつい形だと思ってください。

私の場合、そのカードはゲーム関係の支払いにしか使っていなかったので、傷は浅く済みました。

でも、もしふだんの買い物に使っていたらと思うと、今でもぞっとします。

この件で学んだことは、3つです。

  • 「無料」の裏には、必ず何かがある。年会費が無料なら、どこで利益を出しているのかを考える
  • 契約するときは、説明文を読む。面倒でも、読む
  • 明細を見る。見ていれば、もっと早く気づけました

今回の記事に出てくる5つの質問を、あのときの自分にさせていたら、どうだったでしょう。「なぜ無料なの?」「だれが得をするの?」——1つ目で止まっていたはずです。

この話は、子どもにもしました。おかげか、ゲームは「無料の範囲で遊ぶもの」という感覚が身についたようです。

無料アプリ、無料お試し、無料プレゼント、初月無料。あまい言葉は、これからも次々に出てきます。

止まって、ひとつ質問できるかどうか。それだけの違いです。


次回は第9話「お金は誰かの笑顔に変えられる?」。使うことで、人をよろこばせる話です。

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